大腸がんを生きる仲間

がんと向きあう こころの灯

がん患者さんのこころ
がんに出あったあなたのこころが歩む道

がんと出あっての衝撃

がんを疑う症状を自覚した時から、患者さんのこころの動揺は始まります。がんかもしれないという不安、検査に対する恐れ、検査結果を待つまでの時間はとても長く感じられるかもしれません。そして、がんと告げられた時に、「頭の中が真っ白になる」と表現されるような非常に大きい衝撃を受けることになります。やがて、「何かの間違いではないか」とご自分の置かれた状態を否認しようとする気持ちが起こります。そして、「もうだめだ」という絶望や、「なぜ自分ががんにならなければならないんだ」という怒りの感情もわいてきます。がんの告知から2〜3日の間に、これらの思いが交錯するようです。

その後の1週間〜10日くらいは、気持ちがふさいで落ち込んでしまうことが多いです。今後の漠然とした不安や、「これまでと同じように仕事をしたり旅行に行ったりできなくなる」というような寂しさ、家庭や職場での自分の役割が少しずつ変わっていくのを思い孤立感を感じたりします。夜ぐっすり眠れなくなったり、食欲が落ちたりすることもあるでしょう。

人のこころがもつ強さ

これらは、がんに対するこころの健康的な反応です。そして、人のこころにはこのようなストレスを和らげて何とか対処しようとする、意識的・無意識的なはたらきがあります。つらい状況にあっても物事の楽観的な側面に目を向けられるようになり、おおむね2週間ほど、遅くても3ヵ月程度で立ち直ることができるようです。こころの中では不安な気持ちを抱えていても、がんについての情報を集めたり、医療保険について調べたり、休職手続きをとったりと現実的な問題に対処するようになります。

ただし、2週間以上経っても重い落ち込みが続くようであれば、適応障害やうつ状態という、精神的苦痛が非常に強い状態になっている恐れもあります。そのような場合は、適切な治療を受けることが必要になってきますので、担当医や看護師にご相談ください。

がんに対するこころの反応
がんに立ち向かう

みなさんは、“インフォームド・コンセント”という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。“説明と同意”と訳されますが、最近ではがんの告知が一般的になってきたので、患者さんが担当医からがんという病気や治療方法についての十分な説明を受けてから、治療に臨むことが一般的になってきています。それによって、患者さん自身で治療法を選択したり、あるいは同意したりすることを原則とした言葉です。

それにもかかわらず、がん治療という未知の世界に足を踏み入れる不安は大きく、がんの治療はつらくて危険というイメージもいまだ強いようです。治療はうまくいくのだろうか、治療に苦痛はないだろうかなどと、患者さんの心配は尽きません。しかし実際に治療が始まれば、医療者や家族・友人のサポートを受け、患者さん同士で支えあって、がんに立ち向かっていけるようになります。

続く不安と失われない希望

治療が無事に終わって退院すると、これまでの不安な気持ちから解放されると思われがちです。しかし、退院後に急に不安に襲われることがあります。退院後の患者さんの心境は水泳の初心者に例えられるのですが、病院にいる間は、医療者が見守る足の届くプールで泳ぐようなものです。周りからのサポートを受けながら、一生懸命がん治療に取り組んでいる間は不安を感じないで済むのかもしれません。けれども、退院して医療者の目の届かないところへ行くというのは、いきなり沖合にぽんと投げ出されるようなものです。誰もいない足の届かない海で泳がなければならないのですから、不安や孤立感を味わうのも当然といえます。

さらに残念ながら、がんは再発・転移が起こりうる病気です。最初の治療から3年間は特に再発の可能性が高いため、この時期に再発への不安が高まり、中には動悸がしたり眠れなくなってしまったりする患者さんもおられます。しかし、このような再発の不安は年とともに薄れていきます。多くのがんで再発の可能性が低くなる治療後3年が過ぎる頃には、「そういえば、テレビをつけるまでがんのことを忘れていた」と思うこともできるようです。

しかし、再発した場合には、初めてがん告知をされた時の衝撃を再び受けることになります。今回は患者さん自身のがんに関する知識も増え、病気の進み方もある程度予想できるようになっているため、楽観的に考えることができにくく、初めての告知の時以上に強い衝撃となります。実際に、「この時期が一番つらかった」とおっしゃる患者さんが多いのです。それにもかかわらず、いったん再発後の治療が始まれば、ある方は再びがんと立ち向かい、ある方はがんと共存し、ご自分なりのがんとの付き合い方を探し出されます。多くの患者さんが希望を取り戻し、自分らしい生き方を見つけていきます。人のこころには、とてつもない力が備わっていると感ぜずにはいられません。