大腸がんを生きる仲間

がんと向きあう こころの灯

がん患者さんのこころ
2.サイコオンコロジーという医療ができること

サイコオンコロジーとは何でしょう

“サイコオンコロジー”という言葉をお聞きになったことがありますか。日本語では“精神腫瘍学”といういかめしい名前がついていますが、非常に簡単に言うと、がんと人のこころの関係を研究し、患者さんや家族の不安やこころの痛みを軽くすることを目的のひとつとした学問のことです。ですから、サイコオンコロジーに携わる医療者は、こころの痛みを治す医療の専門家といえるでしょう。

どのようにしてこころの痛みを治すのでしょう

がんの診断を受けた時や、再発が分かった時などに強くなるこころの痛みを、サイコオンコロジーではどのように治していくのでしょうか。こころの専門家は、主に次の3つのリハビリテーションにより患者さんのこころの痛みを軽くします。

1つめは、カウンセリングです。カウンセリングでは、こころを通してこころの痛みを治します。患者さんは、これまでの人生でがんに匹敵する、あるいはそれほどでなくともさまざまな困難に向き合ってきた経験や歴史を持っておられます。また、財産・業績といったものもあります。それらを培ってきたものを今一度眺めてみると、必ず最良の取り組み方が見つかります。その見つける作業を患者さんと一緒に進めていくのが、サイコオンコロジーに携わる医療者の役割です。つまりカウンセリングでは、情報を整理し、事態を正しく理解するための援助を行います。人は元々自分自身で危機に対処できる能力を持っているので、自分自身の苦しみを周囲の人に理解してもらえるような環境を提供されると、自然に自ら回復していくようになることが多いのです。

2つめは、身体を動かすことでこころを癒すリラックス法です。全身の筋肉を収縮させたり緩めたりすることで、不安で常に緊張している状態からリラックスした状態に身体を戻していきます。

3つめは、薬物療法です。抗不安薬、睡眠導入薬、場合によっては抗うつ薬などの薬剤を使用します。

サイコオンコロジーでは、これらの治療法を患者さんの状況に応じて使い分けたり組み合わせたりしながら、患者さんの苦痛をできる限り軽くする努力をします。

こころの痛みについて相談しましょう

患者さんの中には、「こころの痛みを担当医や看護師、相談員に話すのは場違いではないか」と考える方がいらっしゃいますが、相談することをためらう必要はありません。こころの問題を抱えたままでいると、生活の質が悪くなり、それは治療にも悪影響を及ぼします。場合によっては、ご自分が一番希望する治療を受けられなくなることもあります。積極的に相談することは精神的な弱さの表れではなく、むしろ強さの表れであると、サイコオンコロジーでは考えられています。

がんと向きあい、がんと上手に取り組むためには、医療者との良いコミュニケーションが必要です。「ちょっと落ち込みすぎたかな」「こころの痛みがなかなか取れないな」と思った時には、まずは担当医や看護師、ソーシャルワーカーに相談してみましょう。そして必要に応じて、こころの専門医、精神科医、心療内科医、心理療法士を紹介してもらいましょう。

こころの専門家のみつけかた

現在のところ、がんの治療にあたっているすべての施設に、こころの専門家がいるとは限りません。日本サイコオンコロジー学会(JPOS)では、精神腫瘍医養成のための研修会や講演会を開くとともに、「登録精神腫瘍医制度」を始めました。近日中に、同学会のホームページ上で、がんの治療経験があり、専門的な立場から患者さんや家族の方のこころの悩みに対応できる精神腫瘍医の氏名や所属施設が公開される予定です。

また、全国に375施設ある「がん拠点病院」には、緩和ケアチームが必須になっています。そのチームには精神科医が必ず1人は加わっていますので、「がん拠点病院」を受診されるのもよいでしょう。

次頁からは、がんになった患者さんのこころが歩んでいく道で、次々表れる不安に対しての、こころの専門医からのアドバイスです。こころが道で迷った時に、明かりを灯して導いてくれることでしょう。