大腸がんを生きる仲間

大腸がんと生きる仲間たち

世間的には、まだ「がん=死」のイメージが根強く残っているようですが、実際には、大腸がんを克服し、充実した日々を送られている患者さんが、たくさんおられます。「大腸がんの仲間たち」は、そのような患者さんの体験を聞かせていただき、悩みや苦しみを共有しながら、前向きに病気に立ちむかうことをお手伝いしていくコーナーです。

Vol.01 No.2 東京都 安田陽一さ(46歳)と奥様

私自身、友人にすらがんを知られるのが怖いと思っていた時期もありました。同じ病気の仲間が、大腸がんを理由に社会的難民にならないよう、支え合える患者の会を作りたいと思っています。



手術、抗がん剤治療を経て、回復へ

●術後に「お疲れさまでした」と言った――らしい…

――手術について、お聞かせいただけますか。


手術当日の朝日
安田さん2004年12月2日に手術を受けました。当日は、朝日が最高にきれいだったことを覚えています。
 後日、若い先生が教えてくれたのですが、手術室の中で、執刀された先生方に「お疲れさまでした」と術後に言っていたそうです。自分自身は麻酔で記憶がないのですが、本当だとしたら、それなりに大したもんですね私も(笑)。
 術後5日目、初めての食事開始で、お粥を食べました)。先生に「悪いところは全部とりきれましたか」と聞くと、「全部とりきれました」とのことで、ホッとしました。でも、やはり、リンパ節転移があったので、抗がん剤治療が必要になるだろうといわれ、精神的に落ち込みました。


12月6日 術後初めて口にしたもの

12月7日 術後初めての食事


●抗がん剤治療では、イライラして家族に当たったことも

――抗がん剤治療について、お聞かせいただけますか。

安田さん海外では術後の抗がん剤療法は注射がスタンダードだけど、日本では経口の抗がん剤療法もあり、どちらでも選べますよと先生から説明を受け、現状での日本で多く使われている経口での抗がん剤治療を選びました。仕事を続けながら入院せずに抗がん剤治療ができる点はありがたかったですね。服用時に脱毛や嘔吐などの副作用はありませんでしたが、肝機能低下により、度々黄疸が出る事も有りました。
 抗がん剤は、8時間おきに服用しなければならず、服用前の30分、服用後の1時間は食事をとってはいけないということでしたので、生活時間が抗がん剤中心になってしまい、生活が縛られているようで辛かったですね。それでも、最初の頃は、1クール(2週間服用し1週間の休薬)の休薬期間で気持ちをリカバリーできましたが、最後の方は(休薬期間が無く)通しで服用しておりましたので、気持ちを維持することが大変でした。

奥様抗がん剤は、朝6時、午後2時、午後10時と8時間毎の服用が必要でした。午後9時に子供を寝かせつけてくれるのですが、主人も一緒に寝ちゃうのです。起こして飲ませれば機嫌が悪くなるし、起きなかった場合、翌朝、「なんで起こさなかったんだ」と怒られました。感情をコントロールすることが難しかったようですね。それから薬代は、多いときには月に8万円近くになりました。行政からの医療費助成制度があり、あとで支給されたのですが、立て替えるだけでも大変な金額でした。主人もイライラして家族に当たることがあり、私には、抗がん剤治療の2年間が最も辛かったですね。当初5年の予定が2年で終わってくれて、助かりました。

●子供たちのために、生きていたい

――最近の生活は、いかがですか?

安田さん酒も煙草もすっぱりやめました。煙草は、がんを告知された時に手元に残っていた3本を吸ったのが最後です。酒は、退院後に多少飲むこともありましたが、最近は1滴も飲んでいません。
 禁煙・禁酒は、健康な人には難しいかもしれませんが、大腸がんを経験した僕にとっては「生きるか、死ぬか」ということの選択みたいなものですから、生きていきたいと強く思えれば止めることなんて大したことではないですよ。
 そして生きる力の一番の源は、子供たちですね。子供たちと接していると、生きていてよかったと思います。生きる勇気をくれる子供たちには、本当に感謝しています。この子たちの将来を見届けるためにずっと生きていたいと思います。
 今の私には両親よりも1日でも多く長生きすることが目標で、家族と一緒に生きていることがすべてです。ですから、これからも生き続けていくことが大切なんだと思います。

●がん患者を社会的難民にしないために

――大腸がんを克服されて、新たに考えているようなことはありますか?

安田さん自分ががんになってからは、患者会などのボランティア活動を行っています。最初は、自分が情報を集めるために始めましたが、いまでは、そうした情報を同じ病気の仲間たちに発信してゆきたいと考えるようになりました。
 患者同士の繋がりが広がりつつあるなか、それぞれのがん患者さんの会はたくさんありますが、私たち、働き盛りの年代の大腸がんの患者会はまだ少なく。年代的に特にがんを知られたくないと思っている方が大部分なんだと思います。私自身、友人にすらがんを知られるのが怖いと思っていた時期もありました。それでも、同世代の働いている人が、がんになった時に社会的地位を失う可能性があるのは口悔しいと思ったので、公表することにしました。このインタビューも、ためらいはありましたが、そんな気持ちから受けることにしたのです。
 私は、同じ病気の仲間が、大腸がんを理由に解雇されてしまうような社会的難民にならないよう、なんとかお互いを支え合えるような患者の会を立ち上げたい。それがいま一番やりたいことです。そして、いまだに巣食っている「がん=死」のイメージも払拭してゆきたいですね。

●「信じる」それがないと医療は始まらない

――最後に同じ病気の仲間や、このサイトの来訪者の皆さんにメッセージをお願いします。

安田さんまだ大病を経験されていない一般の方々には、体調を崩したら、早めに受診することをお勧めしたいと思います。大腸がんは男女ともに近年増えていますので、大腸がんの早期発見のために、恥ずかしがらずに大腸内視鏡検査を受けて欲しいと思います。手遅れにならないうちに。
 同じ大腸がんの方には、「信じる」ことの大切さをアピールしたいと思います。特に医療の場では、お互いに信じることからしか始まりません。そのためには、セカンドオピニオンを含めた、患者としての努力も必要であり、その上で、医師を信じて、自分を信じて、前向きに大腸がんと向き合ってください。


Vol.1