3.治験(その1)

医薬品の開発

薬は、古くから経験的に人の体に有効と考えられる植物や鉱物を粉末にした生薬として用いられていました。その後、生薬に含まれる多くの有効成分が発見され、その精製・分離が行われてその抽出物を薬として用いるようになりました。さらに、細菌学や病原微生物学の進歩によって、抗菌薬をはじめとする化学的合成による薬剤の開発が進歩しました。

現在でも、婦人科がんの治療で世界的に普及しているタキソールは、セイヨウイチョウの植物成分から発見された物質として知られています。

現在、医薬品の大半は種々の受容体や酵素を標的として研究開発が行われています。特にヒトゲノム情報を活用し、さまざまな疾病に関与する遺伝子を突き止め、その遺伝子が作りだすタンパク質の構造と機能を解析して、当該のタンパク質に作用する低分子化合物を見つけだすという「ゲノム創薬」が主流となっています。

薬物は、治療効果を示す主作用と、毒性を示す副作用を併せ持つため、新薬の開発段階では、いくつのもの段階に分けた安全性の検査(前臨床試験、臨床試験[治験])が課せられています。

前臨床試験と臨床試験(治験)

薬剤の候補となった物質の効果の有無や、毒性、薬物動態については、製薬会社が厚生労働省に届け出をして審査を受けた後、動物を用いた生体実験(前臨床試験)と、人を対象とした臨床試験(治験)が行われます。

前臨床試験で十分な効果と安全性が認められた薬剤は、今度は実際に人に投与されて、主作用と副作用が3段階(第Ⅰ相試験〜第Ⅲ相試験)に分けて検討されます。これが臨床試験であり、一般的には「治験」と呼ばれています(表)。

薬剤を市場に提供するための認可を取得する上で、第Ⅲ臨床試験は最も重要な試験です。例えば、がんなどの疾患によっては、治験の経過が社会的に大きく注目されることになり、治験の最終段階においては多数の患者を被験者として治療の対象とし、薬剤の効果と副作用の詳細な検討が行われます。

表 治験順序と内容

第Ⅰ相臨床試験
同意を得た少数の健常人(抗がん剤の場合は患者)を対象に、安全性などを確認する。
第Ⅱ相臨床試験
同意を得た少数の患者を対象に、安全性と有効性を確認する。
同意を得た少数の患者を対象に、用法・用量を確認する。
第Ⅲ相臨床試験
数百人から数千人の患者を対象に、既存薬などと比較して安全性と有効性をチェックする。

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