5.医療費控除(その1)

医療費控除と高額療養費制度の違い

高額療養費は、かかった医療費の負担を直接軽減する仕組みで、被保険者自身が加入している保険者の管轄で運営されます。保険者に申請して助成(保険給付)を受けますが、対象となるのは保険適用の医療費のみで、それ以外の費用は対象となりません。

医療費控除は、確定申告で税務署に申請するものであり、いったん支払った税金を控除(免除)し返却することで、患者(納税者)の負担を軽減する仕組みです。マッサージなどの保険適用外の医療費や通院時の交通費等も控除の対象となります。

両者の大きな違いとしては、(1)申請先(保険者 vs 税務署)、(2)還付金(保険 vs 税金)、(3)申請の時期(随時 vs 翌年2/16〜3/15)が挙げられます。

医療費控除とその算出方法

まずその年に支払った医療費から、保険金等で補てんされる金額(表 1)を差し引きます。そこからさらに10万円を差し引いた金額が、医療費控除の金額です。ただし総所得金額等が200万円未満の人は、10万円でなく、総所得金額等の5%を差し引きます。なお医療費控除には、最高限度額が定められており、200万円を超える医療費控除はできません。

以上を計算式で表すと、次のようになります。
(その年中に支払った医療費)−(保険金などで補てんされる金額)=(A)
(A)−(10万円またはその年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)=医療費控除額
(最高で200万円)

10万円を超えた医療費全額が戻るわけではありません。自分の所得税率を掛けた金額が最終的な還付金額になります。

表1 保険金等で補てんされる金額等
(医療費から差し引かなければならない保険金等)

医療費から差し引かなければ
ならない保険金等
医療費から差し引く必要がない
保険金等
  • (1)
  • 健康保険から支給される「出産育児一時金」・「家族出産育児一時金」
  • (2)
  • 健康保険から支給される「療養費」・「家族療養費」・「移送費」・「家族移送費」・「高額療養費」
  • (3)
  • 生保保険会社または損保会社等から支払を受ける「傷害費用保険金」・「医療保険金」・「入院給付金」
  • (4)
  • 医療費の補てんを目的として支払われる「損害賠償金」
  • (5)
  • 任意の互助組織から医療費の補てんを目的として支払われる「給付金」
  • (1)
  • 出産のために欠勤した場合に支払われる「出産手当金」
  • (2)
  • 健康保険から支給される「傷病手当金」
  • (3)
  • 生保会社または損保会社等から支払を受ける「死亡保険金」・「重度傷害保険金」・「休業補償金」
  • (4)
  • 使用者等から支払を受ける「見舞金」

「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から):厚生労働省保険局」より作成
国税庁ホームページ No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)より作成

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